第八回 灰汁と食品加工
灰汁を使った食品加工の代表的な使い方のご紹介
古来より、灰汁は手軽に手に入る有用な機能を持つ物質として、多くの食品加工に使われてきました。
天然物からの産物であり、長年使った経験から、その安全性は実証されています。その代表的な使い方を紹介しましょう。

■ ラーメン・ちゃんぽん麺
ラーメン麺やちゃんぽん麺は本来、粉を練るときに灰汁を利用していました。
今ではラーメン・ちゃんぽん麺などの中華麺の消費量が増え、大量生産するにはたくさんの灰汁が必要とされました。一方、燃料に草木を使わなくなった現代では、灰汁を採るために必要な灰が足りません。現在、ほとんどの麺は炭酸カリウムなどの食品添加物(かんすい)を使って練られてています。
実はちゃんぽん麺の製麺には、孟宗竹の灰汁がすばらしく適しているのですが、そのことは余り知られていません。
■ 沖縄そば
沖縄そばは伝統的な沖縄料理です。麺が独特で、そばと呼ばれていますが、蕎麦(そば)粉は一切使わず、小麦粉を灰汁で練る中華麺の一種であります。
現在の大量生産では一般的にかんすいを使いますが、本来の灰汁を用いる自家製麺の店が健康志向や回帰思考が高まり、その影響もあってか人気が高く、現在店舗数が増える傾向にあります。
■ 海老
適度な濃度の灰汁と塩の溶液に皮を剥いだ生エビを漬けておくと、煮込などで加熱したり天ぷらに使ったりしても海老の肉質が固くなったり縮むことを防げます。
■ こんにゃく
コンニャク芋を摩り下ろし水と灰汁を入れ、よくこねる。またはミキサーでコンニャク芋に水を入れてすりおろす。さらに灰汁を入れて練り、それを団子状又は板状に整形し、水で煮る。これもあくまきと同じく、こんにゃく澱粉を灰汁が餅状に変化させるためです。
こんにゃくづくりのコツは、こんにゃく芋と水と灰汁の配合量で決まります。
現代のこんにゃくづくりでは灰汁の代わりに水酸化カルシウムが使われています。多種類のミネラルが入っている灰汁で作られたこんにゃくと、単体の水酸化カルシウムで作られたものとでは、風味が一味違うようです。
■ あくまき
あくまき(灰汁巻き)は、薩摩藩で、戦いのときの保存食として作られたと言われています。
もち米を一晩中灰汁の中につけて置き、あくる日、そのもち米を竹の皮で包み、お湯で煮るともち米が寒天状のきちきちとした食感に変わります。 これはもち米の澱粉が灰汁の強アルカリにより餅状に変化したためで、黄粉や砂糖・醤油でいただくと、独特の風味があり美味です。
あくまきづくりのコツは、灰汁の濃度ともち米の漬け具合です。また、竹の皮できつく巻くと硬くなり、ゆるく巻くとやわらかく煮あがります。巻き加減にもコツが必要です。
あくまきはアルカリ性加工食品で腐敗しにくいのが特徴です。
※ 灰汁の採り方
あくまき作りに詳しい霧島市福山町佳例川の立本久美子(七五歳)さんに聞きました。
あくまきには草木灰(木材や大豆の茎やかやの混合灰)が良いとか。灰一升に対して、一升の灰汁を採るのがあくまきに適した灰汁の採り方と教えてもらいました。
乾燥している灰が水を幾分吸いますので、灰一升に対して約1.5升の水又はお湯を注ぐということになります。

■ 山菜のあく抜き
植物の「あく」は水溶性で水にさらすだけでも溶けて出ますが、山菜などの場合、煮込みすぎると有用な栄養素が抜けすぎたりします。短時間で茹でて細胞を傷つけ「あく」を抜けやすくし、木灰を溶かした冷水にさらすと良いです。これは、有機酸成分がアルカリと結合して抜けるからです。
ワラビのあく抜きの場合、生のワラビに軽く灰をふりかけ、沸騰したお湯をかけるか、灰汁で煮ます。煮立ったらすぐ火を消します。お湯が自然に冷めてゆき、この過程でワラビのあくが抜けて濃い茶色になります。途中で時々ワラビの根をつまんでやわらかさを確かめます。ワラビがやわらかくなっていたら時間にこだわらずすぐにワラビを引きあげます。
ヨモギのあく抜きは、ヨモギに軽く灰をふりかけて、沸騰したお湯をかけます。あまり時間をおかず引き上げて冷水で洗います。
現在では、灰汁の代わりに重曹(タンサン)を使用するのが一般的になっています。
