第十一回 灰と酒造り
灰と酒造り、灰と農業、灰を使った洗剤の起源など灰にまつわる伝統を紹介します。
■ 神代の昔から行われてきた醸造法〜灰持酒と火持酒
平安時代すでに醸造されている御神酒で「白酒(しろき)」と「黒酒(くろき)」というお酒があります。
伊勢神宮では現在でも年に三回、御酒殿祭(みさかどのさい)とよばれる神酒造りが行われており、出来上がった白酒・黒酒は神嘗祭(かんなめさい)などの重要な祭典の際に御神前へお供えされています。
黒酒(くろき)とは、米麹に飯と水を入れて発酵させた後、草や木の灰を入れたお酒のことです。
細菌の繁殖を抑え、酒を日持ちさせるために灰を入れたのです。これを灰持酒(あくもちざけ)といいます。
江戸時代になり、火を入れて殺菌し日持ちさせる技術が一般的になりました。これを火持酒(ひもちざけ)と呼びます。 現在の清酒のほとんどは火持酒です。
■ 灰と農業
灰は、肥料の三要素である窒素・燐酸・カリのうちカリウムやカルシウムを多く含み、水に溶けると強いアルカリ性を持ち、酸性化した土壌を中和してくれる力と同時に肥料としても優秀です。
また、強アルカリ性で殺菌力や制菌力を持ち、病害菌の制御や病害虫の予防にもなるため、昔から農業にも重宝されてきました。
ニラ、ネギ、なすび、トマト、ラッキョウ、ニンジンなどに灰を与えると育ちが良く、品質も良くなります。
ジャガイモや大和芋の種芋の切り口に灰を塗り、植え付けると、切り口を殺菌し、腐敗を防いでくれます。

■ 洗剤の起源
その昔狩猟した動物を焚き火で焼いたとき、灰に動物の脂が落ちて泡だちました。その脂の混じった灰で洗うと汚れがよく落ちることを体験したことが洗剤の始まりと言われています。(この時の泡は、灰のアルカリ性が動物の脂肪を加水分解し、脂肪酸塩が生成されたことにより起こったものでした。)
灰と脂の混じったものをわらなどの束につけて、なべ釜や茶碗を洗うのに使っていました。これはまさに現代のクレンザーです。
このようにして、日本では昭和の四十年代まで日常的にかまどや囲炉裏の灰を使ってました。
